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喜悦旅游#1 「旅の多い人生」

更新日:10月6日



 旅の多い人生。

 わたしの今までを一言で表現するなら、そうなるだろう。


 20代。ひょんなことから旅芸人としての人生が始まった。


 浅草で青春を過ごし、今は無き渋谷の「青い部屋」で踊っていた私の人生は、ある夜横浜でパフォーマンスしたことから一変する。ショーの新人コンテストで所属グループが優勝し、翌年ニューヨークでパフォーマンスすることとなったのだ。それを機にアメリカで少しずつ活動し始めた。


 浅草から遠距離で通うのが流石に無理になってきたころ、「北米のパリ」と呼ばれるモントリオールに移住することになった。そこを拠点に、北米、南米、ヨーロッパ…色々なところに旅に出たのだ。数年かけて、なし崩し的に旅芸人の生活が確立していった。



Backstage of ACME burlesque, Mainline theater, Montreal QC. CANADA


 朝、目が覚める。瞼を開ける直前「あれ、ここってどこだっけ?」と毎日思う。目を開けて、景色を見る。「ああ、ここだった。今日はあの現場だった」と実感する。旅が暮らしとなるとき、日常は毎日リセットされていく。荷物を詰める。移動する。荷物をひらく。仕事する。荷物を詰める。次の街に行く…生活は、どこまでもコンパクトだ。トランク6個が私の全財産だった。旅は、自分の人生に必要なものを常に明らかにする。何を最優先にして生きるのか?トランクの容量には限りがある。その時どきの最優先と共に、わたしは前に進んでいた。


Photo by Ruth Gillson


 30代の終わり。ひょんなことから旅は停止する。

 

 2016年6月。日本で踊っていた夜だった。舞台上で、胸に明らかな違和感を感じた。客席が一瞬スローモーションのように見え、大音量の音が全く聞こえなくなった。


 Show Must Go On.

 一度舞台に立ったものは、ショーを止めてはならない。平静を装い、袖に戻る。その日はお祝いのショーだったので、その空気に水を差すわけにはいかなかった。終演後急いで着替え、荷物を詰め、少々不躾なほどのスピードで会場を後にした。その2日後、ドクターストップがかかり、舞台のお仕事は無期限活動休止に。こうして、わたしの旅は終わった。


 …と思っていた。(つづく)


 

株式会社RaymmaのWEBマガジン「喜悦旅游」は、伊地知奈々子の文・盛田諭史の写真という定点から、「価値観の切り替わり」を表現することを目的としています。


価値観の切り替わりは、個人を変える。

個人の小さな変化こそ、世界をダイナミックに変える原動力。


あなたを切り替える旅に、出てみませんか。

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