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喜悦旅游#13「摩周湖の霧」〜北海道編11

更新日:2023年10月20日



 

洪水伝説の巨石・インカルシを後に、摩周湖に向かう。


 

林道を抜け、摩周湖手前にある、屈斜路湖沿いのカーブに入ると、急に空は曇り、霧めいてきた。遠軽での、抜けるような青空が嘘のようだ。霧の中のカーブ路を、ひたすら走っていく。


 

やがて、展望施設に到着した。ガラス張りのデッキがあり、摩周湖を一望できる。グランピング的でイマドキだ。


 

展望台に上がると、目の前の景色が一気に広がった。山に囲まれた湖、圧巻のブルー。摩周湖は、その透明度でも世界的に有名だそうだ。あまりの透明さが、これほどの青を醸しだしているのだろうか。霧の中でもなお、神秘的な色合いだ。


 


うつくしい。しかし…なんだろう。

 


歓声が上がりそうな見事なパノラマ、しかし気分はなぜか上がらない。カーブで車酔いしたわけでもない。なぜだろう。摩周湖に近づくほどに、胸のあたりに圧迫感が込み上げてきた。心なしか霧が濃くなってきたような気がする。今感じているこれは、濃密すぎる霧のせいなのか、はたまた、気圧の関係か…。


 

湖のまんなかには、小島があった。案内板によればカムイシュ島というらしい。そして、背後の山はカムイヌプリ。カルデラの外輪山だ。小島はかつて溶岩ドームだった部分の頂上だそうだ。説明文には、約7000年前の巨大噴火で形成されたカルデラ地形とある。朝目撃した巨石、インカルシに比べ、数千年単位であたらしい。


 

案内板から目を上げてみれば、盛田さんは、はるか向こうで写真を撮っている。着いた直後こそ「寒い!」と驚いていたが、数秒後には、意にも介さず動きまくっている。元気な人だ。



しかし、なぜかしんどさが増す一方なので、いったん市街地に戻り、休憩したいと伝えた。


 

途中立ち寄った道の駅に、「摩周そば」の情報があったので行くことにする。生産量の少ない「幻のそば」で、たった10件ほどの農家で生産しているらしい。実際食べられるお店も数件だというが、そのうちの一つ、公共施設「釧路圏摩周観光文化センター」に向かう。


 

観光文化センター内にある「レストラン摩周」に一歩入ると、地元の方で大賑わいだ。1箇所だけ空いていたテーブルに座り、ざるそばを注文する。さほど待たずして、爽やかな透明感が際立つそばが運ばれてきた。




 


摩周そばは、そば粉八割・小麦粉二割の二八蕎麦、出汁は鰹と昆布。そばの香りと出汁の香りが共鳴しあっている。

 


ほんの少しだけ、そばを出汁に入れてすする。


生命力あるのどごし、からだが一気によろこぶ!先ほどの体感が、嘘のようだ。気がつけば、あっという間に完食してしまった。

 

少し元気になり、観光文化センター館内を見てまわる。すると、摩周湖の伝承が巨大な絵画で飾られていた。



いにしえのアイヌ部族間の抗争で、宗谷から敗走したアイヌの老婆が、孫とはぐれて嘆きつづけ、摩周湖の島になってしまった。だから摩周湖の小島は、神老婆(カムイシュ)と言う、という伝説。


 

もしかして、あの時感じたのは…?


 

ふと空想した。

老婆の涙は霧となり、摩周湖の周辺を濡らし続け…それを感じ取ったものに、日常のかけがえの無さを、無言のうちに伝え続けている。



「よろこびであれ、違和感であれ、体感は生きてこそ感じる奇跡だよ。」


 


いにしえ人が、今を生きる私たちに思いを伝える。もしかしたら、そんな経験だったのかも知れない。


 

摩周湖に、静かな感謝が湧き上がってきた。今生きている奇跡をもう一度体感し、同時に鋭気を養うことができた、ありがたさ。


 

まだまだ、旅は途上。進んでいこう。いざ、北海道最東端へ。



 

 

 株式会社RaymmaのWEBマガジン「喜悦旅游」は、伊地知奈々子の文・盛田諭史の写真という定点から、「価値観の切り替わり」を表現することを目的としています。


価値観の切り替わりは、個人を変える。

個人の小さな変化こそ、世界をダイナミックに変える原動力。


あなたを切り替える旅に、出てみませんか。

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