喜悦旅游#2 「旅の道連れ」
更新日:10月6日
病を得たわたしは、旅芸人としての人生が強制終了となった。ショーの環境から一旦離れ、集中的に療養していくために、1年を通じて気候が温暖な沖縄に移住した。人生に、久しぶりに「何もしない時間」が訪れたのだ。常に自分と共にあった「何を最優先にして生きるのか?」という問いかけ。旅芸人生活で持ち物が限定されるからこそ生まれたものだが、ショーを最優先にして生きる道は、閉ざされた。では、何の道がある?あらたな問いかけが始まった。
シンプルに、自分を最優先にしていくことにした。自分が気楽になること、体が楽になることにだけ取り組むうちに、今まで全く知らなかった様々なセラピーに出会った。興味がある物に取り組んでいったら、心身の調子はみるみる良くなった。それに感動し、自分が受けてきた施術を学び始めた。そしてリラクゼーションサロンを沖縄で開業し…気付けばわたしは健康を取り戻し、再び旅に出るようになった。カバンひとつで、リクエストを受けた街への施術の旅だ。
ある年、関東に未曾有の大雪が降った日。友人が紹介したい人がいるというので、横浜に立ち寄った。奇しくも、自分の運命を変えたショーが開催された街だった。雑居ビルの階段を上がると、何とも言えない不思議な雰囲気の店があり、オーナーの青年を紹介された。

盛田諭史。
のちに、この破天荒な人間が相方となり、様々な活動をしていくことになろうとは。この時は知る由もなかったが、我々には「何度も死にかけている」という共通項があった。これはわたしの独断だが、死と隣り合わせだったものは、生という光を嗅ぎ分ける才能がある。共通する独特な視点が、必然のうちにわれわれを旅に連れ出したのかも知れない。
時を経て、2023。
幾たびとなく死にかけて
ふたりが
生きているということを実感しに行く
旅に出る
喜悦旅游。
これは、現在進行形の回顧録。
旅を通じ、時空を行ったり来たりする物語が始まる。(つづく)

株式会社RaymmaのWEBマガジン「喜悦旅游」は、伊地知奈々子の文・盛田諭史の写真という定点から、「価値観の切り替わり」を表現することを目的としています。
価値観の切り替わりは、個人を変える。
個人の小さな変化こそ、世界をダイナミックに変える原動力。
あなたを切り替える旅に、出てみませんか。