喜悦旅游#6 「オロロンライン」〜北海道編4
更新日:10月6日

(旧神居古潭駅)
北海道最北端、宗谷岬に向かう旅の途中。1億6000万年前の地球の記憶を地形に留める、奇岩風景「神居古潭(カムイコタン)」を堪能したわたしたちは、再び留萌に戻り、日本海横を北上する「オロロンライン」をひた走ることとなったのだが…。
神居古潭に出入りする時、実はちょっと奇妙なことがあった。
目的地をナビに入れているのに、通り過ぎて何もない道を、何度もぐるぐる通るのである。「あれ、ここさっき通ったよね?」と思うことが、来る時も帰る時もあった。通過する時に目にした、茹でとうきびの屋台に寄りたいと言っていたのに、帰りには何故か出てこない。まあ、単純に見逃したり、営業時間が過ぎて気づかなかったのかも知れない。
しかしこの旅の途中、何度も通って「あれ、ここ…?」と思ったまま時間が過ぎること、逆に異様に早く目的地に辿り着くこと、など、時間に関する不思議な体験が結構多かった。北海道はとても広いので、ナビ通りには行かない、というのが現実だろう。あるいは浪漫的に表現するなら、地球の歴史を岩に刻んだ場所、神居古潭のパワーを、存分に受け取ってしまったのかもしれない。
パワースポットの影響か、はたまた広大さゆえの北海道マジックか。オロロンラインは、ちょっとした珍道中となった。
まず昼食。留萌に戻り、腹ごしらえしてから北上しようと提案したが、未知が好きな盛田さんは、次の街に行こうと主張する。確かにそれも悪くない。日本海を見ながらドライブし、少し先の街の食堂を、旅のマイルストーンにする。

(旧花田家番屋)
青空に、ひたすらきらめく日本海。
途中の留萌郡小平町では、明治38年に建てられた、北海道内最大規模の鰊番屋「旧花田家番屋」を見ることもできた。北海道を舞台とした、わたしの大好きな冒険活劇漫画「ゴールデンカムイ」の鰊番屋のエピソードを思い出し、現物を見ることで描写の忠実さに改めて感銘を受けた。ここにも食堂があったのだが、とにかく留萌を出よう!ということで先を急いだ。
しかし…。
オロロンラインは気が遠くなるほど長く、そして留萌郡の長さも、私たちの想像を超えていたのである。

(オロロンライン。日本海沿いをずっといく。岩にポツンと佇む鳥。)
結局、留萌の「次の街」までは衝撃的なほど時間がかかり、たどり着いた食堂は「本日終わり」の札が掛かっていた…。
一瞬ガーン、となったが、このペースで行けば、日没までに宗谷岬に行くことは不可能ではない!
無言のうちに、わたしたちは体制を立て直した。近くに、北海道が誇るコンビニ「セイコーマート」がある。素早く道中のオヤツを買い、オロロンラインの先を急いだ。途中ペースが急に上がり、美味しいソフトクリームを食べる余裕すらできた。そのリッチな味わい、柔らかさ。これを堪能するために、昼食をすっ飛ばしたのではないかとすら思った。

(ソフトクリーム。ちょっとだけ元気を取り戻す)
そうしている間にも、陽は少しずつ傾いていった。
海岸線は、長く長く、続いている。
あと少し、あと少しで宗谷岬。
オロロンライン、どこまで一体走るのか…。(続く)
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